こんにちは。いろいろな物を自分で修理しているタケさんです。
少し前に「椅子の脚が折れた」との知らせがあり、自前で修理してみることになりました。
今回はその修理の様子をお伝えします。
BLOG
【修理に挑戦】折れた椅子の脚を修理してみた
こんにちは。いろいろな物を自分で修理しているタケさんです。
少し前に「椅子の脚が折れた」との知らせがあり、自前で修理してみることになりました。
今回はその修理の様子をお伝えします。
まずは椅子の脚が折れた部分やその周辺がどうなっているかを見てみました。
ステープル針で黒い布が張られているのですが、折れた部分の周辺を見やすくするのと後々の作業をする際に邪魔になるので少し外しました。
何故か削られた部分があって、さらに両側に木ダボの穴が空いていて、今回の椅子の脚はそれらを全て通るように割れていました。
力の集中する部分が削られたりその近くに穴が開けられたりしているため強度が下がっており、この椅子の脚は折れるべくして折れた、というような印象でした。
ネジと接着剤を使う方法はすぐに考えましたが、他にも修理方法があるのではないかと思って少し調べてみました。
インターネット上を検索してみたところ、椅子を作っている工房などに修理依頼が来ることもあるようで、大半は細いネジと接着剤を使って修理していて、修理の過程が分かる動画がいくつもありました。
他に木ダボを使った方法があるようでしたが、金具などで固定するという方法は見当たりませんでした。
そこで、今回の脚の折れた椅子の各部の状態を考慮して、基本的にはインターネット上の情報にあるようにネジと接着剤を使って修理することにしました。
ただし、堅い木が折れるほどの力が加わる部分に細いネジを使うのは強度的にかなり不安なので、コースレッドという引張強度が高め(引っ張られる方向に強い)、かつネジ山が高めのネジを使うことにしました。
手順も検討し、以下のような順序で作業を進めることにしました。
最初に、どの方向にどう割れたかを見て力が掛かる方向を推測し、残っている部分の厚みやどこからどこまでをネジで挟むようにするかといったことを考えました。
ただし、売られているネジの長さは自由に決められず30mmや48mmといった飛び飛びの値から選ぶしかないので、ギリギリ外に飛び出ない長さと位置を検討して選択しました。
今回修理する椅子は大部分が木製で脚の部分も木製です。しかし、かなり堅い木を使用しているようでそのままだと長いネジは途中でちぎれてしまう可能性が高いので、まずはネジ用に下穴を開けました。また、ネジの頭が飛び出ないようにするため、ネジ穴の周辺を彫刻刀などで削っておきました。
ネジ穴を開けた後は、ネジを途中まで締めてみて貫通するかどうかを確認しました。
長いネジの片方は問題なさそうでしたが、もう片方は年輪の影響か下穴の方向が曲がって少しずれてしまいました。これは直しようがなさそうなのでこのまま進めます。
下穴を開けたのでネジは問題なく入っていって貫通することを確認しましたが、椅子の方にも下穴を開けるために一旦外そうとしたところ、ネジがちぎれてしまいました・・・。インパクトドライバーを使って外そうとしたので、繰り返し衝撃を受けたことによる疲労破壊が原因かもしれません。
刺さったままのネジを外そうと、ペンチやドリル用チャックを試してみましたが全く回りませんでした。
ネジザウルスも検討しましたが、調べてみたところネジの頭部分が取れてしまった場合は不可で、特にコースレッドの場合は軸部分がかなり硬く、工具の方が削れてしまうため使用してはならない、とのことでした。
世間一般でもネジが折れることはよくあるようで、そのようなネジを外すための専用の工具が開発され販売されていました。
その名も「折れたビス抜き」です。(スターエム No.5040)
https://www.starminfo.com/jp/product/hojyogu/5040.html
ドリル用チャックはドリルで穴を開ける方向に回すと締まりますが、今回のようにネジを外す方向に回す(逆回転させる)と緩んでしまいます。(左下の写真)
そのため、外す方向に回した時に締まるような物が必要で、それが「折れたビス抜き」のセットに含まれる「逆回転チャック」です。見た目ではよくわかりませんが、内部の構造(ネジ山の方向など)が違います。(右下の写真)
これまでも何度か折れたネジを外したいという事があったので、今後も必要になるだろうということで購入をお願いしました。
「折れたビス抜き」が届いて、とりあえず説明書に書いてある通りの方法で試してみることにしました。
しかし、出ているネジの軸部分が短くネジを斜めに通すようにしたこともあって、逆回転チャックの胴部分が当たってしまってネジの軸部分をしっかり掴むことができず、何度か試行錯誤してみたものの、そのままだとネジは外せませんでした。
もう一つの方法として説明書に書いてあった専用ピンを使う方法も、木が堅すぎて全く刺さりませんでした。とりあえず逆回転チャックで専用ピンごと掴んで回しては見たものの、空回りするだけで折れたネジは全く回りませんでした。
専用ピンで掴む部分を長くすべく、彫刻刀などでネジの周囲を削ったり掘ったりしてから何度か再挑戦しましたが、回る気配すらありませんでした。
購入してもらったセットには専用ピンの小と大(それぞれ、ビスの直径が3.2~3.8mm用の物と、4.0~4.8mm用の物)が2本ずつ入っているので、大の方の1本を半分に切ってネジのすぐ近くを逆回転チャックで掴めるようにしました。
しかし、専用ピンの断面はC字形でその内側を見ると溝などが全くなく、ネジ山をしっかり食い込ませないと滑ってしまうと思われます。
仮に食い込ませることができたとしても、今回のようにネジが全く回らないほどきつい場合、刺さっている部分の木とネジ山の接触面積よりも出ているネジ山と専用ピンの接触面積の方が少ないため、刺さっている部分の摩擦力を上回れず、結局、回せないので外れない、ということになるのではないかと考えられます。
そこで、高出力のモーターの軸にあるようなDカットやキーとキー溝のように、摩擦力ではなく段差を作ることで滑らないようにすることを検討しました。
上の図のように無加工だと丸い軸と丸い穴だけなので強い力を掛けると滑ってしまいますが、Dカットは軸の一部を削りネジなどで押さえることで、キー溝は軸と穴の両方の一部を削った部分にキーをはめることで滑らないようにするという方法です。
ただし、今回のネジの場合はネジ山の一部を削ることになるので、これで失敗すると元の状態には戻せないため、最悪の場合、成す術がなくなることも覚悟する必要があります。特にネジ山がなくなると掴む部分の直径がさらに小さくなってトルク(回す方向の力)が出せず、完全に折れたネジを外せない状態になることが予想されます。
他に良さそうな方法を思いつかなかったので、「これでダメなら諦める」という覚悟でネジ山の一部を削ることにしました。
専用ピンとネジを削った部分の隙間にステンレス製の針金を差し込んで、キーとキー溝のような構造にして回す際に滑らないようにするため、ネジ山の一部をダイヤモンドヤスリで削りました。
ちなみに、ダイヤモンドヤスリで削った部分は写真の赤丸の辺りです。
使用したダイヤモンドヤスリは某100円ショップの物でしたが、問題なくネジ山を削れました。
半分に切った専用ピンとネジを削った部分にステンレス製の針金をセットし、逆回転チャックで固定して回したところ・・・
これまで苦戦していたのは一体何だったのかと思うほどあっけなく回って抜けました!
彫刻刀などでネジの周囲をかなり深く削ってしまった部分は、ネジにエポキシパテを巻き付けたまま差し込んで埋めておきました。
なお、使用した専用ピンは消耗品ではあるものの何度か使用できるとのことなので、「折れたビス抜き」のセットに付属している「押し出し棒」と「押し出し治具」、手持ちの金槌等を使って、折れたネジなどを全て外して回収しました。
1本のネジがちぎれただけで予定外の作業時間が入ってかなり長引いてしまいましたが、これで本来の作業に戻れます。
貫通させる部分のネジ用の下穴は、木が堅い場合は特にネジの軸部分より少し大きめの直径のドリルで開けた方が良いですね。
思わぬ寄り道をしましたが、気を取り直して修理を続けます。
とりあえずネジを一旦すべて外してから、クランプで折れた脚を椅子に仮止めし、折れた脚の方に空けたネジ穴を使って椅子側に下穴を開けました。
これでようやく準備が整ったので、最終段階に移ります。
折れた脚の方の全てのネジを途中まで締めておいて、割れた面全体に接着剤を塗ってからクランプで固定し、最後にネジを締めて固定しました。
また、座枠や隅木と脚の間に隙間があったので、木の端材を詰め込んだり木工用ボンドを隙間に入れたりして固定しました。
しかし、貼り合わせた所がずれていてわずかに隙間が空いたり角度がずれたりしたようで、脚の長さが変わってしまって1本だけ浮いてしまう状態になったので、脚の先端に付いていた樹脂パーツを薄く切って浮いてしまう脚に瞬間接着剤で貼り付けて調整しました。
接着剤が固まったのを確認し、恐る恐る座ってみましたがとりあえず問題なさそうでした。
最後に、ステープル針を外して黒い布をめくっておいたのを戻して修理完了です。
おまけで、折れた部分の辺りに紐を巻いておきました。これで修理した物かどうかがすぐにわかるはずです。
ネジがちぎれて右往左往しながらも、修理を終えてとりあえず座れる状態になりました。
インパクトドライバーを使うと今回のようにネジがちぎれることがあるので、手回しか電動工具で回す場合はドリルドライバーの方が良いかもしれません。すぐに外す予定がある場合や回す時のきつさを確認するような場合などは、特に手回しで少しずつ締めながら確認した方が良かったですね。
また、下穴の直径もネジの軸部分の直径を測った上で、木の堅さも考慮して少し大きめの穴を開けるべきでした。
反省点が多々ある上に一度脚が折れているので不安はありますが、紐で印を付けたので気をつけて使ってもらおうと思います。
「壊れたら直す」ということで、今後、また何かが壊れても自前での修理に挑戦する予定です。
TOP